日本最大の秋芳洞を訪れたのが6月2日。同じ週の8日には、大分県の佐伯市に呼んでいただきました。
ここの市役所には、「こんな公務員がいたなんて!!」と心の底から頭の下がる、めっちゃ素敵なお友達がいて、空港までお迎えに来ていただきました。去年の台風で自宅が泥流でたいへんなことになってたのに、休みが取れたら毎年続けている東北復興支援に出かけちゃうような人。かなりの有名人で、もう何年も前から、毎年神戸の勉強会で会ってる人です。(気になる人は「ネコの会」で検索!)
高速で佐伯が近づいてきたとき、車窓からドーンと見えたのが、巨大な採石場。おっと〜!!めっちゃ石灰岩地帯じゃないですか!!!こりゃ、鍾乳洞があるに違いない!!
合併で巨大化した佐伯市は、全国的に有名ではないものの、海山川ぜんぶよいところ…のはず。
はず、というのも、今回は「ついでの観光」は一切考えず、何にも下調べをしていなかったから、よく知らないままだったのです。(講演の翌日は「佐伯市の役に立つようなお手伝いをしたい」と、申し出てました。)しかも、講演が2本立てでまったくの新ネタだったんで、余裕もなかったし。…だったのが、採掘場を見て途端にワクワクし始めちゃったのでした。
「蕎麦でも食べましょう」と連れてっていただいたのが、こんな素敵な景色のところ。

日本一でかい水車は故障中でしたが、この川がめちゃきれいで、下流から上流に向かいながら、ああ、ウナギたくさん獲れそう、この辺はアユで、もうちょっと上にヤマメ(アマゴですけどね、地方名はエノハ)だな、みたいなワクワク感。

普段料理の写真を撮らないぼくが思わず撮ってしまった、タケノコのお寿司。美しいだけでなく、美味しいんですよ〜。タケノコとは思えない爽やかさで。

そして、橋の上流には、オーバーハングの岩壁に遊歩道。見た瞬間に、「あれ?ここ有名ですよね。ぼくの持ってるクライミングのルート集に載ってますよ」と、気づきました。

とっくの昔にやめてしまったクライミングの、しかも20年以上前に買った本の、しかもめちゃ後ろの方に載っていた、しかも絶対行かない九州の何県かもわからない、しかもしかもこんな小さな写真1枚を覚えてたぼくがすごいですよね…って、そんな話はどーでもよくて、鍾乳洞。
まさにこの遊歩道の先にあったのですが、残念ながら、去年の台風の復旧工事中で、閉鎖されてました。

こぼれ話はここからです。
しょげてるように見えちゃったのか、話してくれたのが、近隣に山ほどある洞窟の、知られざるエピソード。
なんと、中で旧石器時代の遺物がちょこちょこ見つかってるのです。それだけでワクワクするでしょ。ヒゲはやして毛皮で肩の出た服でヤリ持ってる姿が目に浮かんだでしょ。暗い洞窟の中、焚き火を囲んで、肉食ってるでしょ?
なんとここで、4、50年前に世紀の大発見があったそうなんですよ。旧石器人の描いた壁画の発見!!!
どえらいことじゃないですか!!!!!スペインのアルタミラでしょ!ラスコーでしょ(フランスでしたっけ?)!!世界中で教科書に載ってて習った、あれに匹敵するものが何と日本にもあったなんて!!!
まさに今運転してもらってる、ほっそい山道がマスコミも殺到して渋滞するくらいの大騒ぎになったそうです。そりゃなりますよね。描かれていたのは、すでに絶滅したオオツノシカで、角の部分が、薄れてはいたものの見事に描かれていたと、別府大学の専門家が鑑定の結果、発表したんですから。
ますます、鍾乳洞が閉鎖されてることが残念でならなくなった、そのタイミングで!!
「まあ本人も言い出しにくかったんでしょうねえ。」
え? あ? え、え? な展開。
3日目のこと、だったそうです、騒ぎになってから。
近所に住むおじさんが、「誠に申し訳ないんですけど」と名乗り出たのは。
ピンとくる人にはピンときますね。かつて、ゴッドハンドと言われた遺跡発掘の第一人者が、事前にこっそり自分で埋めたやつを掘ってたという、あの歴史的ねつ造事件。
でもそんな、腹立たしい事件ではありませんでした。
そのおじさんが小学生の頃、自分の名前を壁に彫ったそーなんです、ひとりで洞窟探検をした記念に。
斎藤逸郎の、斎だか逸だかの上の方が、オオツノシカの角に見えちゃったんですって。
って、鑑定した別府大学の先生、赤っ恥じゃないですか!!の爆笑ネタ。
…なんですけど、一瞬笑えるものの、しんみりしちゃう話でしょ。その時の心理やその後の気持ちを思うと。志の輔さんの落語みたいに、ほろっとさせられるような。いや、事実なだけにより深いかもしれません。まあ誰も、一人も、悪くないですからねえ。
とまあ、そんなこんなな佐伯の旅。
初めてチャレンジした「男女共同参画について」の話も、いちおう無事に北折流に構成できました。夜の部、役所職員や向学心あふれる市民が熱心に聴いてくださった「佐伯人創造塾」のチラシ講座も無事に終えて、これまた尋常じゃなく「こんな鮨屋があっていいんか?」なド変態のお鮨屋さんでマニアックな日本酒を山ほど堪能いたしました。(あ、ド変態というのは、日本酒ラブな人には、最高のほめ言葉ですからね。)
職員が作成する勉強会のチラシが、堅苦しくていかにも行政文書のつまらないものから、翌週には激変したという、うれしい報告もいただきました。(マジビックリの変貌ぶりでした。)
そして、「佐伯のために役立ちたい」との申し出に対して用意していただいたのは、ケーブルテレビの番組の構成へのアドバイス。佐伯人のすごいのは、それを会議室ではなく、わざわざ道の駅の食堂にセッティングしてくれるところです。なんとね、そこに併設されてる淡水漁の水族館が、番匠川にこだわってて、とっても充実してるのです。魚好きのぼくへのおもてなし精神なんですねー。
学芸員さんがまたマニアックな人で素晴らしく、話を聞くだけで楽しかったんで写真は撮り忘れましたm(__)m。
メインの水槽は、水槽に見えてじつは屋外。再現した川の流れを建物内からガラス越しに見る仕組み。ちょっと目を離すとサギがヤマメ(しつこいですが地方名エノハ)を襲いに来るので、しょっちゅう捕まえに行って補充するんだそうです。
そんな地味にすごい名所もありますからね、佐伯。次回は2〜3泊で来たい町でした。
あ、その市役所職員がどんなにおもろい人なのかを示すチラシがありますので、こっそり無断添付しちゃいましょう。いいですよね、宣伝にもなるんだから。

このベロ出してる人がそうです。これは、ぼくの手が一切入っていない、山形の知らない人が作ったものです。公務員が作った「食育講演会」のチラシとは思えないでしょ。いるんですね、あちこちに素晴らしい人が!!!